初めて学生ボランティアとして被災地に行ったのは震災2カ月後のことだった。場所は岩手県遠野市。100人の学生がバス2台に分乗して東京を出発。顔も名前も知らなかった学生同士が3泊4日を共にした。大きな柔道場に、寝袋にくるまりみんなで寝た。
初めて被災地と呼ばれる場所に足を踏み入れたとき、言葉が出なかった。100人の大学生の誰もが一言も言葉を発しようとはしなかった。そのときのことは今でもしっかりと記憶に残っている。
「何かしたい」。その思いだけで動き始めた。「全国の元気になることばで一曲の歌を作ろう」というプロジェクトを発案し、450~500もの元気になることばを集めた。大学内のホールで子供たち50人とともにコンサートを開いた。それを見た同級生たちも、「何かしたい」と声をあげた。
活動の輪は広がり、入学から1年後には私のまわりに40人が集まっていた。「音楽で元気づけたい」と考えた学生たちと気仙沼市唐桑町でのコンサート開催に向けて動き出す。