被災地に行った経験があるのは、私だけだった。ボランティアどころか東北にすら行ったことのない学生がほとんどだった。震災について伝えることが私の務めだと思った。伝わらず苦しいときは、帰る場所になっていた気仙沼市唐桑町のみんなのことを思い出した。
唐桑町には何度も何度も足を運び、たくさんの人に出会い、話をした。津波の話をしながら、「それでも海は恨まねぇんだ」と言ったおじいちゃんに、これまで感じたことのない強さを感じた。
コンサートは仮設住宅の近くのホールで2012年9月と12月の2回開いた。どちらも多くの人が来てくれた。12月のクリスマスイベントにはおよそ100人の子供が集まった。
途中でメンバーが辞めたり、メンバーに熱意が伝わらなかったり、自分の無力さも感じた。だからこそ、「唐桑にきてよかった!」と話すメンバーと、「歌に救われた」というおじいちゃんの言葉に、私は涙が止まらなくなった。