リビア問題の屈辱は、シリア問題で「強いロシア」を演出し、国内外の求心力を高めんと欲す雪辱への誓いを確固にした。そして緒戦は勝利した。開戦/非戦の間を漂流するバラク・オバマ米大統領(52)の威信が大きく揺らぎ、露提案を渡りに船と乗らざるを得ない敵失もある。しかし、アサド政権の化学兵器投入に対する開戦/非戦という最大課題を、化学兵器廃棄という矮小(わいしょう)化したテーマへとすり替える、マジックの成功は紛(まぎ)れもない。
プーチン氏の高笑いが聞こえてきそうだが、氏の置かれた状況もオバマ氏と紙一重。安保理は9月28日、軍事制裁を盛り込んだ決議を採択した。ただし、「新決議」が開戦の条件。しかも、「新決議」採決の有無は不透明で、内戦が激化すれば、アサド政権に対するプーチン氏の影響力欠如を実証することになる。
ところでオバマ氏の緒戦敗戦は、シリアがレッドライン=越えてはならない一線を越えたのに、警告通り武力を行使しなかったからではない。
《国家指導者が自らの意志で戦争回避を選択しても、必ずしも威信は損なわれない。しかし、約束を守る能力がないと世界が見なせば、力の弱まりは不可避となる=英エコノミスト誌9月21日号》
そう。プーチン氏もまた《約束を守る能力》が試されている。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS)