「川渡りはヌーの『大移動』の一環。食料となる牧草や飲み水を求める生態的、社会的な行動だ」。マサイマラで動物保護に当たる民間団体のケニア人生物学者、スティーブン・キソツ(42)が説明した。
キソツらによると、ケニアとタンザニアの国境をまたぐ広大な平原を、推定約150万頭のヌーが一年を通して牧草を求めて周回している。一緒に行動するシマウマなどを合わせると、サバンナを移動する動物の総数は200万頭にも上る。
毎年前半、タンザニア側で子供をもうけたヌーの群れは、乾期となる6月ごろケニア側へ移動を開始。マラ川を渡ってマサイマラの黄金色の牧草を食べ尽くし、10~11月の小雨期にタンザニア側に戻っていく。
平原は2万5000平方キロに及び、日本の四国の1.5倍近い広さだ。ヌーは何を頼りに移動しているのか。キソツは「気候の変化を察知し、牧草が育つ雨の方向へ進む『遺伝子』が組み込まれている」と解説する。