ヌーは臆病な動物だが、大群で移動することで危険な川渡りに挑むことができ、ライオンなどに襲われる恐れも少なくなる。毎年、移動中に数十万頭がワニや肉食獣の餌食になるが、これが逆に「生息数の急増防止につながっている」と言う。
ヌーなどがマサイマラに残す何万トンもの排泄物は、翌年に牧草が育つ肥料になる。「(大移動により)自然の生態系が保たれている」。キソツが強調した。
気候変動の影響
ただ近年、この生態系のバランスがさまざまな脅威にさらされている。その一つが気候変動だ。
ケニアの野生動物に詳しいナイロビ大講師のジェラルド・ムチェミ(61)は「雨期の時期が一定しない上、降雨量も減っており、ヌーの食料になる牧草が減少している」と指摘する。
2009年には深刻な干魃(かんばつ)がケニアを襲った。マラ川の流れも枯れ、ヌーを含め多くの動物が死んだ。干魃の周期は短くなっているとされ、11年にも再び起きた。