≪朽ちていく町 月日だけが流れていく≫
浪江町は休日でも人影がなかった。崩れたままの塀、雑草に覆われた公園の遊具…。「ガシャーン、ガシャーン」。商店の壊れたシャッターが風にあおられ不気味な音を立てる。線量が比較的低いとされる「避難指示解除準備区域」の中心街でも人の背丈ほどの雑草が茂り、「あれから1000日」を実感する。
福島市の避難先から1日だけ戻ってきた運転手の原田宣男さん(57)は、自宅前で道路の草刈りをしていた。高くなった草で車が傷むという。まだ、水道も通っていない。「規制が解除されても町は元通りにならない」と、あきらめ顔だが「自宅に戻って植木いじりや日曜大工を楽しみたい」と話す。
「居住制限区域」の大熊町大川原地区。避難先の山形市から一時帰宅した横田嘉政さん(68)は「除染しても家の西側に山がある。流れてくる雨水や落ち葉などで、すぐ放射線量が高くなるのでは」と不安を隠せない。
家屋の地震被害は少なかったが、家の前に立つと警報値を毎時2.5マイクロシーベルトに設定した線量計が鳴る。除染で出た土や植物を入れた袋から出る放射線だ。「自分の地区の線量が下がり家に戻れても、町全体が再生しないと暮らせない」と、訴えた横田さんは「(今の状態では)帰れると言われても帰れない…」と肩を落とした。(写真・文:写真報道局 早坂洋祐、松本健吾/SANKEI EXPRESS)