朝の連続ドラマ「あまちゃん」で一躍脚光を浴びた三陸鉄道。ヒロインの能年玲奈(のうねん・れな)さん(20)が連発した、驚きを表現する「じぇじぇじぇ」は社会現象にもなり、今年の流行語大賞にも選ばれた。
11月末の昼下がり。三陸鉄道北リアス線・久慈駅(岩手県久慈市)を定刻通りに滑り出した列車は、海岸沿いにさしかかると車内の空気が一変した。11月1日に運転士として独り立ちしたばかりだが、おもむろにマイクを握り、運転席から静かに語りかけた。
《この先、次の野田玉川駅までの間は、先の東日本大震災で、三陸鉄道が大きな被害を受けたところを通って参ります》
手元のレバーを微妙に動かし、列車のスピードを少し落とす。談笑していた団体客らは一斉に立ち上がり、窓の外に視線を向けた。その先には壊れたままの堤防や建設途中の防潮堤といった被災地の「今」が広がる。民家が押し流された更地で、慌ただしく稼働する重機も沿岸部に欠かせない風景の一部になった。
「あそこも津波の爪痕かな」「本当に怖かっただろうね」。団体客は思わず息をのみ、カメラのシャッターを押していく。その様子を横目で確認すると、かすかにうなずいた。