濃密なソースができるまで、実に丁寧な手仕事の連続だ。まず牛バラ肉から、大量の脂身を除く。下ゆでし、皮をむいた牛タンとともに、バラ肉の表面を軽く焼き、大きな寸胴鍋で赤ワインとトマトピューレで煮ること、8時間。肉は鍋から取り出し、翌日の食材に。煮汁はソースの土台になるため、繰り返し、肉を煮ては取り出して漉(こ)し、次の日も肉を入れ…。そうして1週間かけて、ようやく「ソースのもと」ができあがる。
このソースのもとに、とろみづけで加えるルーは小麦粉をオーブンでゆっくり数時間、焼いた自家製。バターや油は使わない。ソースが鍋に余れば、さらに煮詰め、濃厚な仕上げ用ソースに仕立てる。「シンプルに作っているぶん、手間暇を省くといけないね」と上原さん。手間と時間をかけることで、一つの寸胴鍋から多層的に肉のうまみを引き出していた。