【KEY BOOK】「洪庵・適塾の研究」(梅渓昇著/思文閣出版、2600円)
著者は洪庵研究の第一人者。『緒方洪庵と適塾生』もある。とくに洪庵の師弟関係、交友関係、夫人の八重の人脈などに詳しい。広瀬旭荘の『日間瑣事(さじ)備忘録』を紐解いて、克明に洪庵の事績を浮かび上がらせた研究など、当時の日々が微細に躍如してビリビリさせてくれた。『大坂学問史の周辺』という著書もあって、含翠堂と懐徳堂が「開かれた和漢学舎」として、いかに大坂の知層を彫り込み、また広げたかを説いて、大いに参考になった。
【KEY BOOK】「緒方洪庵」(中田雅博著/思文閣出版、2625円)
従来の洪庵についての本はおおむね地味すぎるきらいがあるのだが、本書はそのなかで最も新しい。石田純一郎『緒方洪庵の蘭学』や宮崎道生『シーボルト鎖国・開国日本』とともに併読するのがいいだろう。というのもぼくには、シーボルトや杉田玄白がなぜ当時の西洋医学に惚れたのか、しかもそれらが洪庵に及んでもたんなるグローバリズム讃歌にならなかったのはなぜかというあたりから、洪庵の周辺に入るのがいいのではないかと思ってきたからだ。