ただ、今年の成長率予測が1.4%にとどまるなど、最近は経済の減速が鮮明になっている。シロビキの専横や役人の汚職がはびこってビジネス環境が悪化し、天然地下資源に依存する経済構造から脱却できていないことが根底にある。
このため、プーチン政権にはホドルコフスキー氏の釈放で、投資環境の改善を印象づける思惑があったともされている。しかし、ホドルコフスキー氏が「政治犯は私だけではない」と力説しているように、今回の釈放でプーチン政権の強権的体質が変わるわけではない。経済停滞の原因を除去するには、独立した司法など、プーチン政権が骨抜きにしてきた民主主義の基本的な仕組みを整備することが不可欠だ。
今回の釈放劇が映すのはむしろ、ユコス事件の重い代償に足をとられ、苦しんでいる政権の姿なのではないか。(モスクワ支局 遠藤良介(えんどう・りょうすけ)/SANKEI EXPRESS)