権限奪われた長老らの宿願
今回の粛清は、金日成(イルソン)主席時代以来、幹部人事を握り、「党最大の実権組織」といわれた党組織指導部が主導したとされる。検閲部門トップの組織指導部第1副部長には、たたき上げの趙延俊(チョン・ヨンジュン)氏が就任していた。
組織指導部をめぐっては、指導部が管轄していた警察などの司法権が、金正日(ジョンイル)総書記によって後継者(正恩氏)の後見役となる張氏の行政部へと移譲されたという経緯がある。「張成沢は純粋に党の人間ではない」。権限を奪われた組織指導部側はこう見下し、「張派排除が組織指導部長老らの宿願だった」(消息筋)とされる。
一方で、「党が派遣した純粋な党の系譜だ」と組織指導部内で評価されていたのが、軍を監督する崔竜海(チェ・リョンヘ)軍総政治局長だという。金主席と抗日戦を共にした崔賢(ヒョン)氏を父に持つ「血統の良さ」ゆえの信任だった。