能の素材生かし新舞台
「現代劇は時代を扱うフットワークに優れるが、発想が個人的なものに根ざすことが多い。一方古典は、数百年の経験や英知を蓄積し、方法論が熟成されている点で、優れている」。個人的なものは、紙コップのように使い捨てられてしまう、という。ならば、捨てられずに磨かれた古典の英知を現代劇に伝えれば、新たな舞台の創造がかなうのではないか。萬斎は03年、能の素材を、現代演劇の作家・演出家が舞台創造に生かす演劇シリーズ「現代能楽集」を始動。これまでに6作を上演、例えば第4弾「The Diver」(作・演出、野田秀樹)は能「海人(あま)」「葵上(あおいのうえ)」など古典の世界を借りながら、死刑制度の是非など現代的なテーマに切り込んだ。今年2月上演の第7弾「花子について」は、能「葵上」や狂言「花子」など男女の情念をテーマにした古典作品を、劇団ペンギンプルペイルパイルズの倉持裕が現代舞踊、コメディー、ストレートプレイとさまざまな要素を含む現代劇に仕立てている。