運ばれてきたうな丼からは、湯気が立ち上り、かば焼きから焼きたての芳醇な香りが豊かに漂ってくる。たっぷりと塗られた特製の甘いタレが放つ照りがまた食欲をそそる。口に運んでみると、ウナギはふんわりと軟らかく、すぐに溶けてしまうかのような食感が広がった。それを下から支えるコシヒカリを使ったご飯もタレをしっかりと受け止め熱々だった。
えんま帳から推計
橋本専務が店の特徴に挙げたのは「作り置きしないウナギを炊きたてのご飯とともに提供する」というものだった。「私たちはウナギを裂き始めてからちょうど30分後にご飯を炊き始めます。ご飯が炊けるまでの時間と、ウナギに串を刺し、焼き、出来上がるまでの時間はいずれも30分。それぞれの出来上がりが一緒になり、ほかほかの状態でお客さんに出せるのです」
とはいうものの、実際には、お客さんがテーブルについてから15分もすれば、出来たてのかば焼きが提供される。これはなぜだろう。橋本専務は「うちの職人たちはテーブルに出す40分前からすでに仕込みをスタートしているんですよ」と教えてくれた。