その言葉通り、対談は実に率直かつ多彩な内容となった。「軟」の黒田さんに、「硬」の武貞さん。「金正恩が肥満気味なのは、祖父の金日成のそっくり作戦?」「朝鮮半島の各地方の性格を漢字4文字で表すと…」といった文化的な話題から、「北朝鮮が核を捨てるシナリオはありうるのか」「北朝鮮と中国の関係が疎遠になりつつある?」などの安保問題まで。ときに正反対の意見を真っ向から交わしながら、金正恩体制と朝鮮半島の実情にぐいぐいと迫っていく。「黒田さんは朝鮮半島スケッチの第一人者。国土に根ざした人々の生き方を深く理解して、そういった視点からコリアンを説明する。非常に勉強になった」と武貞さんが言えば、「武貞さんは論理的に朝鮮半島問題を解明しようとする。僕はどちらかというと感情的になりがちなので、刺激を受けた」と黒田さん。
北の動きは論理的
本書の製作直後の昨年(2013年)12月、北朝鮮のナンバー2、張成沢氏の粛正というニュースが世界を駆け巡った。〈「新指導者は自分の権力を自分の手で固めようとする」「張成沢は妻・金敬姫があってこそのパワーでしょう。金敬姫が亡くなったりすると彼は危うい」〉など、本書には今回の事件を見通すような内容が収録されているが、2人にとっても張成沢氏の処刑は衝撃的だったという。