全日本選手権のエキシビション後に引退を表明した織田信成(のぶなり)選手(手前)を、高橋大輔選手(左から2人目)らライバルたちが拍手で送り出した=2013年12月24日、埼玉県さいたま市中央区・さいたまスーパーアリーナ(大里直也撮影)【拡大】
絶望の中、仲間にエール
今回、観戦したフィギュアスケートで、私は本物の強さを知ることができた。男子のフリーで、織田信成(のぶなり)選手(関大大学院)の演技終了後のことだ。
合計得点256.47点。ショートプログラム(SP)で5位と出遅れ、フリーでは4回転ジャンプを1本決めて3位に入ったが、総合順位で4位と五輪出場権内の表彰台を逃した。順位は確定していなかったが、得点表示を見て2大会連続の五輪出場は難しい状況と分かった瞬間、彼は大粒の涙を流した。
実力的には、五輪に出てもおかしくないレベルにいた。しかし、勝負の世界においては、結果がすべて。大一番で納得のいく演技ができなかった。
涙を流すのは当然だろう。目指してきた目標に手が届かなくなったのだから、悔しさや悲しさでいっぱいの心境は容易に想像できる。
しかし、彼はその直後に立ち上がると、涙を流しながら、「大ちゃん、ガンバ~!」と声を振り絞ったのだった。
「大ちゃん」とは、これから演技を行う高橋選手のことだ。右すねの負傷を押して出場する日本のエース。織田にとっては、同じ大学の先輩でもある。私はその様子を目の当たりにし、涙が止まらなくなった。切磋琢磨(せっさたくま)してきたライバルであり、仲間へ向けての励ましの言葉だったからだ。