宇川直宏「UKAWA’S_TAGS_FACTORY!!!!!!!!!!(完結編)/1000_Counterfeit_Autograph!!!!!!!!!!」の展示風景。時代やジャンル、著名度もさまざまな模写サインが並ぶ(三嶋一路さん撮影)。Courtesy_of_YAMAMOTO_GENDAI【拡大】
一応は文字で書かれてはいるけれども、読めるとはかぎらない。いや、読めないサインのほうが貴重そうな気さえする。中には読めないどころか、文字なのかどうかあやしいものまである。
実は自分と対面?
以前から宇川は、サインをねだられると嫌な顔ひとつせず応じ、差し出された著作などに進んで署名してきた。ただし自分の氏名ではない。よく知られた他人のサインをしてみせるのだ。もらったほうは目を白黒させるだろう。けれども、これが宇川ならではのサインの流儀だったのだ。
例外に漏れず、宇川も幼いころから有名人のサインに憧れる少年だった。ただしその憧れは自分のサインを持つことではなく、彼らのサインをできるだけうまく模写することへと向かった。いつしかそれは名人芸の域に達し、ついには本展での1000人に及ぶサイン画の展示にまで至ったのである。
だから、他人のサインをうまく模写できることが宇川ならではの署名であることは、実は辻褄(つじつま)が合っている。