ぐらぐらと揺れる船の上で、不安定な姿勢のまま船を操り、ワカメをたぐる。少しずつ明るくなっていく夜明けの海で、波のしぶきをかぶりながら、兄弟は黙々と作業を続けた。
鎌倉のワカメ漁は2月1日から3月半ばまで続く。毎日、沖に出て生育環境を整えながら大切に育ててきたワカメがようやく収穫の時を迎えたのだ。
砂浜では光男さんの奥さんの環さんが朝早くから、ドラム缶を横にして作った大釜に水を張り、かまどに薪をくべてお湯を沸かす。冷却用の3つの水槽にも井戸水を満たす。
「みんなでわいわい言いながら作業をするのが楽しくて」と近隣の人たちが手伝いにやって来る。平日で4、5人。11日は建国記念の日で仕事が休みの人も含め10人以上も集まった。
漁船から降ろされたワカメを大釜でさっとゆで、茶色かったワカメがたちまち鮮やかな早緑色に変わる。一気に春を迎えるような色彩の変化は、確かに見ているだけで楽しい。