冷水にザブンとつけたあと、手伝いの人たちが次々に干していく。干し場にわたされた細い角材には洗濯ばさみがずらっとぶら下がり、次から次へとまだ来ぬ春が干されていく。
干したワカメは夕方、取り込み、ゴザにくるんで小屋にしまっておくという。雨に降られて濡れたり、強風で砂まみれになったりすると困るからだ。翌日また干し直し、かりかりに黒い干しワカメになるには、けっこう手間がかかる。
手伝いの人たちのもう一つの楽しみは生ワカメだろう。しゃぶしゃぶにするとおいしいとか。
「食べなきゃ取材にならないよ」というお言葉に甘えて少しもらって帰った。熱湯にくぐらせ、さっと緑に変わるところを目で味わう。これもまた、春を待つ冬の日ならではの楽しみなのかもしれない。(文:編集委員 宮田一雄/撮影:写真報道局 渡辺照明/SANKEI EXPRESS (動画))