桜の枝が添えられた春野菜の天ぷらは塩でいただく。若狭から仕入れた「ぐじ(甘鯛)のお造り」はぷりぷりで新鮮そのもの。昆布のつくだ煮といっしょに食べると、ぐじの甘みと昆布の塩気がいいあんばいだ。そして、いよいよ名物の「豆すし」。季節の魚介や京野菜、京漬物で握られた一口サイズのすしは、蓋を開けた瞬間に思わず笑みがこぼれるほど彩り豊かで愛らしい。まるで宝石箱のようで、食べるのがためらわれる。
伝統とオリジナリティー
木村さんは、料亭や有名ホテルでの修業を経て、約10年前に「豆寅」を立ち上げた。祇園という立地もあり、舞妓さんのおちょぼ口でも食べられるような一口サイズの料理をと考えた。京料理の伝統を大事にしつつ、ちょっとした遊び心も加えている。