東京証券取引所は、この複雑な“パズル”を解けるだろうか。導入を検討している「夜間取引」のことだ。
株式の売買は現在、午前9~11時半と午後12時半~3時に行われている。スマートフォンなどで手軽に売買できるようになったとはいえ、日中働いているサラリーマンは取引をしにくい。夜間も市場を開ければ、参加者が増え、投資資金がもっと入ってくるという意見が背景にある。
しかし、コトはそう簡単ではない。市場には「流動性」が重要だ。常に多くの注文が出ていて、売りたいときに売り、買いたいときに買うことができなければならない。一定の取引量がなければ、わずかな買いや売りで株価が大きく上げ下げすることになる。投資家が痛手を被る可能性が高くなるほか、一度に大量の注文を出すことで、株価を操縦する不正もやりやすくなる。
一方で証券会社には、夜間に売買する顧客への対応が必要になる。ネット証券でもコールセンターの時間延長などが必要で、対面型証券会社はより大幅な人件費の増大を迫られる。このため、前回、夜間取引が議論された2010年には、大手証券などが猛反対した結果、導入は見送られ、昼休みを短縮して取引時間を延ばすだけに終わった。