ウクライナ海軍、ロシア海軍黒海艦隊(司令部ウクライナ・クリミア自治共和国と特別市セバストポリ)。※「ミリタリー・バランス」2014年版などから。※2014年3月18日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は首都モスクワのクレムリン(大統領府)での演説で、ウクライナ南部クリミア自治共和国と特別市セバストポリのロシア連邦への併合を宣言した。【拡大】
ロシアは、ウクライナにおける自国民保護を口実に、軍事介入の意向を表明した。現時点で、ロシアはウクライナ南部のクリミア自治共和国に自国軍を展開し、自治共和国政府をロシアの傀儡(かいらい)にすべく腐心している。仮にロシアが軍事行動をウクライナ東部にも拡大することになれば、ウクライナ軍が応戦する。そうなるとこれまでウクライナ人であるかロシア人であるかについて、曖昧にしていた人々も民族的帰属を明確にしなくてはならなくなる。そしてウクライナ人とロシア人の民族紛争が始まる。この影響はロシア本国だけでなく、ウクライナ人、ロシア人の双方が居住するモルドバ共和国や中央アジア諸国にも及ぶようになる。そうなるとユーラシア地域全体が極めて不安定になる。この観点からも、ロシアがウクライナに軍事介入することを止めさせなくてはならない。
「ロシア国家の死活的利益が損なわれる場合には、近隣諸国の主権が制限されることがある」という制限主権論をロシアが放棄するように国際世論を結集していく必要がある。それと同時に、日本政府としては、ロシアが悪いならば、ウクライナが正しいと言うような単純な二分化を避け、現在、ウクライナで進捗(しんちょく)している事態を等身大で把握した上で、立場を表明することが重要だ。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)