東日本大震災による死者は1万5884人、行方不明者は2633人(警察庁調べ、3月10日現在)に上る。各地の警察は捜索や身元確認を懸命に続けているが、この1年で減った不明者数は35人。宮城県女川町の高松康雄さん(57)の妻、祐子さん=当時(47)=も津波にのまれ、行方は分からない。「この手で見つけてやりたい」。自らを奮い立たせ海に潜る決断をした。
よみがえる悔しさ
桃の節句を翌日にした3月2日、石巻市の狐崎(きつねざき)港。春の訪れはまだ遠く、小雨の中に雪が交じる。水温6度。ウエットスーツに身を包み、20キロを超える装備を背負い、海に飛び込んだ。
2月に潜水士の国家試験をパスしてから初めての沖に出ての練習。きちんと勉強してきたはずだが、なかなか沈まない。
およそ15分後、インストラクターの指導でようやく潜れた。がれきのようなものは見当たらず、「穏やかな海に戻っていた」。かすかな安心感を得た。一方で、「海の中でも震災の記憶がなくなっていく」と、不意に悲しみがこみ上げてきた。妻はどこにいるのか。「もっともっと練習しなきゃ」