東日本大震災の発生から2月11日で2年11カ月がたった。来月の3年の節目まであと1カ月。東京電力福島第1原発事故の影響で約14万人が避難を続ける福島では、多すぎる課題を抱えたままだ。
「ここで変わる」
山あいの集落を通る国道に、一本の「見えない線」が引かれていた。福島県田村市内にある東京電力福島第1原発から20キロの地点。集落の区長を務める農業、吉田修一さん(58)は「ここを境に賠償の内容が変わるんです」とアスファルトの路面を指さした。
集落の原発20キロ圏は「避難指示解除準備区域」に指定されているが、その外側を囲む20~30キロ圏の住民の中には「20キロ圏の人とは会話をする機会が減った」と漏らす人もいる。避難指示区域は財物や精神的損害への賠償が続いているのに、20~30キロ圏の住民は財物賠償は対象外、その他の賠償も2012年に打ち切られた。住民の心にわずかなひずみが生まれたのか。