むしろ、東ヨーロッパという音楽的にはアメリカやイギリス、さらには日本の後塵を拝していた地域から先進国にまったくひけを取らない音楽がリリースされる時代の到来を祝福すべきではないだろうか。2007年に欧州連合(EU)の一員となった時には加盟国中最貧国で、今も決して経済的には裕福と言えないブルガリアに彼女のアルバムを通して日本国民の関心が高まることを僕は夢想している。
ネットからも世界の音楽吸収
前出のリチャード・スペイヴンが来日した際に、ルス・コレヴァのことが話題になったのだが、何でも彼女は、僕やリチャードが作っている音楽、ブロークンビーツやクラブジャズ(踊れるジャズとジャズに影響を受けたダンスミュージックの総称)を10代の頃に聴きあさったらしい。ブルガリアにその手の音楽シーンはなかったものの、ネットを経由してイギリスや日本の音楽に慣れ親しんでいたそうだ。
これは、彼女が物理的に世界中を移動していただけでなく、インターネットで世界中の情報を入手できていたことが、彼女の音楽性の基盤になっていることの証明になるだろう。彼女は旅の経験のみならず、世界を網羅するWORLD WIDE WEBに接続することでその意識を解放していたのだ。