【安倍政権考】
自民党が民主党に譲歩したことによって、憲法改正手続きを定めた国民投票法が、“改憲阻止法”の色彩を強めようとしている。国民投票法の改正をめぐって、自民、公明、民主3党の実務者は、公務員が組織的に改憲の賛否を働きかける「勧誘運動」を当面の間は認める案で合意した。みんなの党も国会への共同提案に加わる方針だ。公務員労組に批判的な日本(にっぽん)維新の会は難色を示して与党側と折衝中だが、今国会でこの改正案が成立する可能性がある。国民投票運動の公正さを損なう懸念も拭(ぬぐ)い去(さ)れない。自民党総裁の安倍晋三首相(59)は、それで構わないのだろうか。
改憲ブレーキ
公務員の組織的な「勧誘運動」は、選挙運動では認められていない。国民投票運動で容認されれば、全日本自治団体労働組合(自治労、約85万人)や全日本教職員組合(日教組、約26万人)などの公務員労組の多くが、猛烈な改憲反対闘争を展開するかもしれない。
公務員には政治的中立性が求められる。憲法改正の判断は、国民による最も高度な政治行為だ。特定の主義主張を背景とした公務員の組織運動が、国民の自由な判断を左右しようとする状態を認めていいとは思われない。