まだ、中は確かめていない。実はどうやって開けようかと、今もノブに手をかけている状態だ。ここまで来ると、今度は開け方も重要になってくる。今日、このコラムを書いたあとに、私はあらゆる開け方を試し始めるだろう、立ったままノブを捻(ひね)る方法、座って捻る方法、体当たりを繰り返す方法、一旦帰ると見せかける方法、郵便物受けからにゅるっと入る方法、鉄用のこぎりでドアごと切り刻む方法、消防車を呼んで突入する方法、ドアが自分から開くまで待つ方法、それから…。(劇作家、演出家、小説家 本谷有希子/SANKEI EXPRESS)
■もとや・ゆきこ 劇作家、演出家、小説家。1979年、石川県出身。2000年、「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、主宰として作・演出を手がける。07年、「遭難、」で鶴屋南北戯曲賞を受賞。小説家としては短編集「嵐のピクニック」で大江健三郎賞を受賞。最新刊は「自分を好きになる方法」(講談社)、「ぬるい毒」(新潮文庫)。