大みそかだったかまだ30日だったか、とにかく午後に買い物を終えて川沿いを歩いていると、後ろから、ざるっちぇざるっちぇ、という凄まじい音が近づくでも遠ざかるでもなくついてくる。この不愉快極まるざるっちぇ音は恐らくは何者かの足音であろう、何とも言えぬ負の気配を同時に漂わせて来る。さりげなく振り返って見やると、案の定、20代前半くらいであろうか青年が、目線をぐっと落とし、トレパンにサンダル姿で、どういう風に擦ればアスファルトからそこまで不快な音を捻り出せるのだろうと感心するほど神経を逆撫でするざるっちぇを大音量で響かせている。
後ろでずっと、ざるっちぇ
買い込んだ手荷物もそれなりにあることだし、少し歩調を緩めてこのざるっちぇをやり過ごそうと試みるのだけれど、それが極めて難しい。こちらが歩調を緩めると、ざるっちぇも歩調を緩めるのか、距離が多少縮まった程度で抜きさってくれない。当然ざるっちぇの足元が奏でる、ざるっちぇざるっちぇざるっちぇ、は更に悪質に耳元に響き、それどころか、ざるううっちぇえええ、ざるううっちぇえええ、と粘り気を増してくる。