来月に江戸の大祭“三社祭”を控えた東京の名所浅草には、祭りに興じる人々とともに歩んできた、江戸っ子らしいこだわりを感じさせる通りがある。全国でも珍しい、調理道具を中心に取り扱う店舗が200弱並ぶ合羽橋通りである。今回は、その中でも私が月に数度訪れる“釜浅商店”とそこで取り扱われる釜をご紹介したい。
釜浅商店は、明治41(1908)年創業。先人たちの生み出した道具を軸に料理をおいしくする形を追求し、和包丁、鉄器そして、店名にも由来する釜などの料理道具を販売している。彼らは自らを“案内人”と呼んでいるが、店を訪ればその意味を知ることができるだろう。
漠然とこういった物があったら良いな、という来客者にも、こだわり抜いた逸品を求める来客者にも、道具に対する深い愛情とおもてなしの心で、道具との素晴らしい出会いを演出してくれる。