長い冬から一気に解き放たれ、4月の鎌倉は花にあふれている。はらはらと散り始めた桜はもちろん、お寺の境内のカイドウも、線路脇の小さな草花も、まさしくわが世の春の彩りだ。
4月6日の日曜には北鎌倉の建長寺で大花(だいか)展が始まり、お釈迦様の誕生日を祝う降誕会(花祭り)の8日まで国宝の梵鐘(ぼんしょう)がある鐘楼や三門、仏殿、法堂などが見事な花で飾られた。出展者は流派、経歴、国籍を問わないということで、フラワーデザイナーの赤井勝さんの指導を受けた各国大使夫人の作品も見られた。
有名な漢詩に「花に嵐のたとえもあるさ」と名訳をつけたのは作家の井伏鱒二だっただろうか。
6日の午後もその「たとえ」の通り、お天気はめまぐるしく変わった。午前中の暖かい日差しが一転、にわかにかき曇ったかと思う間もなく、激しい雨がたたきつける。あわてて三門の下に駆け込み雨宿りをしていると、傍らの鐘楼で草月流の上原瑞光さんが活け込みを続けていた。