エストニア【拡大】
1カ月ほど前、帰国した田根さんに進捗(しんちょく)状況を聞くと、既に地下の基礎はできあがり、建物本体の建設に入ったという。実は、経済危機などで2度ほどプロジェクトは頓挫。一昨年になってエストニア政府は国債を発行し建設に乗り出した。もちろん予算はカット、計画は変更に次ぐ変更となった。
「(変更は)自分の体を切り刻むようにつらい作業。でも、国として作るんだと腹をくくって借金までしてくれた。若い、名もない建築家にエストニアは賭けてくれた。すごいことです」
田根さんはかつてJリーグのユースチームに所属し、プロを夢見るサッカー少年だった。才能の限界を感じて目標を見失ったとき、図書館の本でガウディの建築を見たことが、建築の道に進むきっかけのひとつとなった。
「エストニアの現場に行くと、氷点下15度の中、職人がコンクリートを打っている。壮絶です。パリで自分たちが机の上で考えたことが、かたちになってゆく。すごいな建築って思う」
2016年完成予定。エストニアを旅する理由ができそうだ。(黒沢綾子/SANKEI EXPRESS)