新刊について取材を受ける作家の渡辺淳一さん=2009年12月14日、大阪市北区(沢野貴信撮影)【拡大】
複雑に絡み合う感情を、論議の的にもなった濃密な官能シーンが彩る。一貫した創作姿勢の裏には医大時代の解剖学実習などで死を見つめた体験がある。
「人間の生命力の根源はエロスであり欲望。そこにいやらしさではなく、いとおしさを感じるんだ」
語り口は穏やかだが内には激しさを秘めていた。率直な物言いの人生論も人気を呼び、エッセー「鈍感力」(07年)は当時の小泉純一郎首相(72)が引用して流行語に。舌鋒(ぜっぽう)は今年まで30年務めた直木賞の選考でも健在で、「頭脳中心で作品にリアリティーがない」と若い作家に苦言を呈していた。
大胆な性描写で新聞連載中から話題を呼んだ長編「愛ふたたび」が出版されたのは80歳になる年。70代で前立腺がんを患い、性的不能にも直面した自らの葛藤を注いだ物語で、若手に向けた言葉を実践してみせた。(海老沢類/SANKEI EXPRESS)