【本の話をしよう】
『シドニアの騎士』(1)を読む手がどうにもとまらない。弐瓶勉の描く正統派SFロボットマンガは、「SFなんて縁遠くなっちゃって」という人にこそ読んでほしい、マンガの新しい想像力だ。
舞台となるのは、太陽系が奇居子(ガウナ)と呼ばれる対話不能の異生物に破壊されたあとの世界。かろうじて地球脱出に成功した一部の人類は、巨大な宇宙船シドニアで繁殖し、旅を続けながら、なんとか生きながらえている。
そんなシドニアが地球を出航してから1000年の時がたった。そして、宇宙船の最下層部でひっそりと暮らしていた少年・谷風長道が、育ての親である祖父の遺言を破り、コロニー上層部の街に出てきてから物語は転がり始める。
シドニアの艦長、小林の庇護のもと衛人(モリト)と呼ばれる戦闘用ロボットの操縦士訓練生となる谷風長道。それを見計らったようなタイミングで再び人類の前に現れる奇居子。旧式ながら歴史的名機といわれる白銀の戦闘機「継衛」への搭乗をなぜか許された長道は、人類の命運をかけた戦いに組み込まれてゆく。
限られた状況下で得体の知れない異生物と戦うという設定は、最近のマンガのトレンドといわれている。例えば、『進撃の巨人』などはその中心。壁の中という極限状態で生活する人類が、壁外にいる未知なる巨人と戦うという物語だ(最近は人間同士の戦いも烈しくなっているが)。