なぜ中島監督は、欧米人ばかりが登場する本作を、実は現代の日本人へのメッセージとして描いたのだろう。「今の時代をじっくりと考えてほしいんです。例えばサラリーマン。終身雇用が風前のともしびとなり、同僚も、先輩も、後輩もみんながライバルとして狭い社内でサバイバルを展開するようになってしまいました。悪い意味での米国社会がやってきたわけです。弱い人から順番に会社は『はい、さようなら』と。僕だけがビビっているのかな。でも、こうした状況は加速していく気がするんですよ」
では、現代の日本人はどんな手を講ずればいいのだろうか。「登場人物たちのように、理屈抜きに何が何でも生きることだけを考えて生きていくこと。今を必死に生きることで、未来の子供たちの“勝利”につなげること」ときっぱり。それができなければ、自然淘汰されてしまうとさえ思えてくるそうだ。例えば上司に媚びを売ってお中元を出すとか、ガード下の焼き鳥屋で仲のいい同僚たちと会社への不満についてくだを巻くとか、それができるだけでも実は平和な世の中だとの思いを強めている。