【アートクルーズ】
20世紀フランスを代表する画家、デュフィ(1877~1953年)の回顧展が6月7日から、Bunkamuraザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂)で開かれる。明るく軽妙なタッチで「生きる喜び」(joie de vivre)を表現したデュフィ。独自の画風を生み出すまでに画家が葛藤した苦悩や試行錯誤にまで迫る展覧会となっている。
デュフィの絵を見るたび、いつも思ってきたことがある。「こんなに自由闊達(かったつ)に絵が描けたら、どんなに楽しいだろう」。例えば「ニースの窓辺」では、輪郭線から色がはみ出し、「ヴァイオリンのある静物:バッハへのオマージュ」では、花や楽器を描いた線が、音楽に合わせるようにリズミカルに踊っている。
青と緑、黄色と紫、赤と黄色の色面同士が明るく、しかも美しく調和し、描かれた線のスピードや柔らかさが心地よい。線の美しさは、日本の磁器・伊万里(有田)に描かれた職人の筆の達者さにも通じるものがある。デュフィが日本で愛され続けるのは、この軽妙洒脱(しゃだつ)さに加え、あこがれの国フランスの香りがあるからだろう。