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生生と実感できる笑わせてきた言葉 町田康 (1/4ページ)

2014.6.3 14:30

(町田康さん撮影)

(町田康さん撮影)【拡大】

  • 増補改訂版米朝落語全集(提供写真)
  • 「なんでもない所をどう表現するかに、作家の蓄積した技術が試されると思う」と話す、作家の町田康さん=7月26日、東京都港区(瀧誠四郎撮影)

 【本の話をしよう】

 私は読み狂人。朝から晩まで読んで読んで読みまくった挙げ句、読みに狂いて黄泉の兇刃に倒れたる者。そんな読み狂人の私は以前にも申し上げた通り、書き狂人でもある。こちらの方は朝から晩までという訳ではないが、書きに狂いて牡蠣の土手鍋を食らいたる者、くらいなことにはなっている。

 そんな書き狂人の私にとって言葉とはなんだろうか。

 凄まじい仕入力

 普通に考えれば、言葉は自らの思想や感情を伝えるための道具である。例えば、小説の中で登場人物を動かす場合、山の麓に小川が流れていた。その小川の畔に男が立っていた。男は名を吉岡と言った。男は左の小径に入っていって懐から牡丹餅を取り出して食べて言った。「餅は餅屋」と。といった具合に言葉を使って、作者の頭の中にある、男の言動やあたりの状況を提示するという寸法である。

 或いは、そうして書いた文章を売って稿料を貰うこともあるので、言葉は文章を書くための原材料ということもできるだろう。原材料を脇から仕入れてきて、これを様々に組立て加工して売るという寸法である。

現在と過去をつなぐ

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