不調が指摘されながらも、最大の見せ場をつくった本田はゴールの瞬間、どうだと言わんばかりの表情で左腕に力を込め、指を突き上げた。ゴールキーパーが反応できないほどの、目が覚めるようなシュートを決めると、精神的支柱ともいえる存在をチームメートが取り囲んだ。
しかし、逆転され、試合終了の笛を聞くと本田は一人、ベンチに向かった。相手と健闘をたたえ合う仲間に背を向け、そのまま帰りそうな勢いだった。スタッフに促され、サポーターへのあいさつには加わったが、全身から不満を発散した。
「気を引き締めて」
28歳の誕生日だった13日。宿舎で選手、スタッフが祝ってくれた。誕生日の翌日に得点したのは前回大会の初戦、カメルーン戦と同じだった。稲本潤一(34)と並んでいた日本人選手のW杯通算得点で単独最多となる3点目。2大会にまたがる得点は本田が初めてだったが、今回の結末は勝ち切った前回とは違った。後半はみるみるプレーの質が落ち、ミスも増えた。後半19分の同点ゴールは、本田が自陣でボールを奪われたのがきっかけだった。