鹿児島県内の自宅で帰国を待ちわびる母の信子さんは今年87歳になる。足腰が弱り、横になって過ごす日も増え、拉致問題のことを口にする機会も減った。
日朝間で拉致被害者らの再調査で合意した後、平野さんは電話で信子さんに「るみ子が帰ってくるかもしれんよ」と伝えた。沈んでいた声に明るさが戻る様子が、受話器越しにも伝わってきたという。
父の正一さんはまだ拉致問題が広く認知されていなかったころ、署名活動を素通りする人たちに涙を流して協力を訴えた。しかし、救出への思いは届かず、02年10月、5人の拉致被害者が帰国した2日後に、79歳でこの世を去った。
それだけに、平野さんは「母に一目、妹を会わせて『よかった』と笑顔にさせてあげたい」と母が笑顔を取り戻す日を夢見る。
必ず伝える
今回の調査対象となった特定失踪者の家族も思いは変わらない。
1973年に千葉県から行方不明になった古川了子(のりこ)さん=失踪当時(18)=の姉、竹下珠路(たまじ)さん(70)は毎月、JR千葉駅前(千葉市中央区)で署名活動を実施している。