≪都市のなかの巨大な発光体≫
靖国通りを渡って歌舞伎町に入る。人の波は徐々に、そして確実にあふれていった。居酒屋、カラオケ、キャバクラ…すぐに客引きから声をかけられる。以前は見かけなかった西アフリカ系の外国人の客引きも目立つ。彼らが口にするのは風俗店、そして売春組織。「オニイサン、アソンデイッテ!」。もうお兄さんという年でもないのだが、合法、非合法取り混ぜて歌舞伎町はそこにあった。
深夜、客引きもいない細く入り組んだ路地を歩いた。雑居ビルの谷間にどこからか聞こえてくる中国語が響く。日本語は聞こえない。以前よりも歩きやすい街になったとはいえ、やはり緊張する。通りから漏れる原色のネオンを頼りに路地を出た。
馳星周(はせ・せいしゅう)の小説「不夜城」(1996年、角川書店)では、歌舞伎町の裏社会を牛耳る中国人同士の闇の戦いが鋭く活写されていた。北京や上海のマフィア、香港や台湾のグループ…。主人公が、だましだまされながら歌舞伎町を生き抜く。通りを歩くだけでは知り得ない裏の顔が生々しかった。
そういえば夜の歌舞伎町を上空からみたことがある。ネオンの光で東京のなかでも圧倒的な明るさだった。「眠らない街」は、都市のなかの巨大な発光体のようにも映った。(写真・文:写真報道局 奈須稔/SANKEI EXPRESS)