こうして見いだされた子供たちが全員プロになれるわけではない。狭き門が待っている。見切りをつけ、別の道を歩み始める人も多い。年齢制限があるので、別の棋士は「誕生日が来るのが怖かった」と述懐した。そんな重い判断を青春時代に下さなくてはならないのだ。
この厳しい道を前にすると、親は考えてしまう。わが子に耐えられるのか、プロになれなかったら別の道に切り替えられるのか。「普通に学校に行かせよう」と思うのも無理はない。
印象的な光景がある。タイトル戦の打ち上げで、勝者が手伝ってくれた棋士の卵たちに出題した。すると彼らは、おいしそうなごちそうに目もくれず、打ち上げ中、ひたすら問題に取り組んでいたのだ。10代の食べ盛りの若者たちである。確かに厳しい道だけど、親元よりも、ごちそうよりも夢中になれるものがあるとは、この上なく幸せなことだろう。
囲碁・将棋では現在、小・中学校の団体戦が繰り広げられている。子供棋士たちが夢中になって石や駒を動かしているのを見ると、そう思う。(小川記代子/SANKEI EXPRESS)