芸術品と魂の関係
プロモーションで来日したパニュ監督はクレイ人形を用いた理由について「ずっとクメール・ルージュを描いていきたいといっても、私は『いつも同じ傾向の映画ばかり撮り続けている監督』だと思われるのは嫌でした。大好きなウディ・アレン監督だって、いつも新しい感覚でニューヨークで暮らすたくさんのユダヤ人を描いてきましたよね」と説明し、結果的にひねり出したのが「本物の芸術こそが魂を創り出す」という視点だった。
例えば仏像の顔を見るとしよう。ある人にとっては「ただの彫刻」にすぎないが、パニュ監督はそこに魂の存在を見ることになる。クレイ人形にも同じことがいえるというのだ。「そもそも芸術品と魂は切り離せないものです。芸術品に魂が宿るのは、芸術品が利己的な存在ではなく、広く人々に開かれ、創造力に富んだものである場合です」