中南米のバスや地下鉄では、文房具やお菓子、CD販売や物ごいなど、移動中はいつもさまざまなドラマが繰り広げられる。ボゴタは加えてアーティストの表現の場にもなっており、よく詩を朗読する人に遭遇した。乗客も好意的に聞き入り、正直な評価を下す。まったく反応がない酷評の時もあれば、ざわめきが起こることもある。
≪まるで別世界 息づく民族文化≫
ある日バスに乗車してきた20代後半に見えるメスティーソ(混血)の男性は、詩が書かれた紙を乗客全員に渡したあと、詩の抑揚に合わせて右腕を大きく振り、1分ほどの朗読を行った。情感豊かに繊細な言葉で紡がれた詩に対して「ムイビエン(スペイン語で素晴らしいという意味)」と最初はパラパラとあがった声は徐々に広がり、20人ほどいた乗客全員から拍手が起こった。気を良くした青年はアンコールに応えてもう一編読み始めると、車内はすでに彼の独壇場と化した。あっという間に公共バスが移動劇場へと変貌したのだ。ノリも人柄もいいコロンビア人気質がにじみ出ていた。