イベント中に天井から大量の水が降れば、「ああ! 大変、濡れなきゃ!」と叫んで誰よりも先に走り込んでパンツまでびしょびしょにしてしまうし、メキシコ料理屋でトルティーヤを食べている途中にダンサーのショータイムが始まれば、「私が盛り上げないと」という謎の使命感にかられ、ステージ上で観客代表として、見よう見まねのサルサを脇目も振らず踊り続ける。だが、その1時間後に、2度目のショーが繰り返され、「こいつはノリがいい」と味をしめたダンサーたちに再び誘われると、「それはちょっと」と、別人のように素知らぬふりを決め込んで、トルティーヤから肉を剥(は)いでしまう。
螺旋階段を降りるように悩む
この歳になって、自分を変えたいなどというのは、きっと贅沢(ぜいたく)なことなのだろう。うじうじ悩まず、それも個性だと受け止めていくべきだし、大体、この世の人間すべてが楽観的になってしまえば、それもまた深刻な問題ではないか。