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【逍遥の児】根岸の子規庵にてもの想う (1/2ページ)

2014.7.30 18:55

 夏の週末。子規庵へ。東京都台東区根岸。JR鶯谷駅で下車。北口から歩く。路地を抜ける。小さな門。ここだ。

 俳人、正岡子規は幕末、四国の城下町、松山で生まれた。青雲の志を抱いて上京する。突然、喀血(かっけつ)した。肺を病んでいたのだ。だが、青年はたじろがない。俳号を決した。子規。ホトトギス-の意。彼の鳥は激しく鳴く。鳴いて血を吐くという。自らの境遇と重ね合わせたのだろうか。

 日本新聞社に入社した。従軍記者として日本刀を背負い、戦地に向かったこともある。根岸に居を構えた。「加賀百万石の大名だった前田家の敷地内に建つ2軒長屋を借りて暮らした。20坪ほどの庭もありました」

 根岸子規会会長、奥村雅夫さん(66)が静かに語る。句が残る。

 ――加賀様を大家に持って梅の花

 少々、得意そうな顔が目に浮かぶようではないか。

 現在の子規庵は戦後、再建された。門をくぐる。玄関を上がる。8畳間。ここで句会が開かれた。また、夏目漱石、森鴎外、伊藤左千夫、与謝野鉄幹ら文士が集い、明治文学の原点となったという。

 隣が6畳間。庵主の寝室兼書斎。庭に面して机が置かれている。不思議な構造。板の一部が、くりぬかれているではないか。

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