「多様性を受け入れ、それが時ともに変化していく。そこにアメリカの魅力があり、料理の魅力にもなっています」と話す、シェフ兼レストラン経営者のバーバラ・リンチさん=2014年7月1日、東京都港区の駐日米大使公邸(佐野領撮影)【拡大】
どこの街にも大手外食チェーンのファストフードがあり、友人とのパーティーでは宅配ピザが定番…。アメリカの「食」というと、こんな画一的なイメージを持つ日本人が多いかもしれない。でも、広大な国土と地域性豊かな気候に恵まれ、さまざまな文化を背景に抱える移民たちが数世紀にわたって独自の価値観をつくってきたアメリカは、本来、多様性と変化に富んだ国柄だ。当然、「食」にもさまざまな魅力がある。アメリカ文化のルーツとも言える北東部ボストンを拠点に活躍するシェフ兼レストラン経営者のバーバラ・リンチさんの料理を取材した。
「故郷の味」
ボストンを中心とするニューイングランド地方は、何百万人に及ぶ移民たちを迎えた海の玄関だった歴史を持つ。海の幸はもちろん、農業や酪農が盛んで食材に恵まれ、この地方の料理にはいまも多くのアメリカ人が「故郷の味」を感じるそうだ。
「ニューイングランドの人々は『漁師と農家の舌を持つ』と言われています。材料がいいので、シンプルな調理法が定番」