捕手の田中は「ホーム」と叫んでいた。遊撃の西山は二塁ベースに入っていた。山根には本塁へ向かう三塁走者が見えていた。皆、やるべきことはやっていた。ただ、ほんの少しのイレギュラーバウンドと、4万6000大観衆の熱気が、名手の判断を一瞬、狂わせた。
山根は「歓声がすごかった。球場全体が敵のように向かってくるみたいに感じた。想定を超える場所でした」と話した。それが甲子園の魔物の正体なのだろう。
主将の山根は「あいつの守備に何度も助けられてきた。あいつで終わったなら仕方がない」と語った。
「甲子園の怖さを感じた」と話した半田監督も「山根はうちの守備の要。県大会では助けてもらった。最後はこうなったが、彼を褒めてやりたい」と語った。
誰も君のせいにはしていない。もう泣くな、山根選手。(EX編集長/撮影:中島信生、松永渉平/SANKEI EXPRESS)