野球をめぐる数字で最もロマンをかき立てられるのは、ピッチャーの投げる球速だろう。今年のオールスター第2戦で、日本ハムの大谷翔平(20)が日本球界最速の162キロを記録した。しかも2度も。
1イニング限定の登板で、観客が何を自分に求めているか、知っていた。「スピードだけしっかり出しに行った」。阪神の鳥谷に投じた初球でいきなり161キロ。そして2球目に162キロ。巨人時代のクルーンが2008年6月、ソフトバンク戦で記録した162キロに並んだ。
この日に投じた23球中21球が直球。このうちなんと12球が160キロ台で、巨人の阿部に対する初球も162キロを記録した。
20歳の若武者。登板のない日は3番に座ることもある二刀流だが、これほどの速球の持ち主は世界でも希少だ。一流打者への道はできれば忘れ、超一流の速球投手を目指してほしい。必ずもっと、速くなる。
試合前には、先発で投げ合う同期生、阪神の藤浪とキャッチボールを始め、スタンドを沸かせた。観客を喜ばせるために2人で決めたのだという。そうしたショーマンシップをさりげなく、さわやかに行えるところがいい。遠投を終えると互いに歩み寄ってグラブでタッチし、試合に臨んだ。