コンサルタントの報酬は、地鶏卵数ダースなど「現物」が圧倒的に多いそうだが、地元の若者たちの間でぽつぽつと起業への関心が広がり始めている。K君らのアイデアを受けて、古家や廃校跡を改造して貸しオフィスとして、大都市圏からの仕事場の移転を働きかける自治体の動きも出てきた。
「光ファイバー、無線LANなど、インターネットのインフラさえ整えば、職住近接の快適な環境で好きな仕事ができるはずだし、広い住居と自然の中で子供たちも伸び伸びと育つ」とK君。陶淵明は中央での役人生活から隠遁(いんとん)するために田園生活を選んだそうだが、一代限りだ。現役ばりばりの世代がパイオニアとして地方に定住するのは何と心強いことか。
安倍晋三首相は遅ればせながら、「地方創生」を言い出したが、カネをばらまかなくてもよい。空き家という人のいない空間を再生させるために、K君ら志しある現役世代の協力を得ながら、国と地方が一緒になって知恵を絞ればよいのだ。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)