【国際情勢分析】
民主派寄りのメディア関係者が相次ぎ襲撃を受けるなど「言論の自由」が揺らぎ始めている香港で、民主派支持の立場を堅持してきた日刊紙「リンゴ(蘋果)日報」とそのオーナー、黎智英(ジミー・ライ)会長(65)が、政治的な意図すら見え隠れする圧力にさらされている。
政治圧力の影
8月28日のこと。香港の汚職取り締まり当局が賄賂防止条例違反の容疑で、黎氏の自宅と、民主派リーダーで立法会(議会)議員の李卓人氏(57)の自宅と事務所を家宅捜索した。李議員は昨年から今年にかけ、黎氏から合計150万香港ドル(約2000万円)の献金を受け取り、その見返りとして、立法会で香港政府に「報道の自由」に関する質問をしたとみられているという。
だが、家宅捜索のタイミングからは、中国が8月31日に香港の選挙制度改革を発表するのを前に、民主派に打撃を与えて反発の気勢をそごうとした思惑も透けてみえる。献金について李議員は、「公明正大で合法だった」と主張し、収賄容疑を全面的に否定。黎氏も「私が民主派を支持しているのは誰の目にも明らか。違法性はない」としていた。