1990年代初頭のハウス・ミュージックと、現在ジャンルを超えて世界的に浸透しつつあるベース・ミュージック(ベースを極端に強調したダンス・ミュージック)を組み合わせ、イギリスで開発されたダブ・ステップ(レゲエとハウスの折衷音楽)の要素も取り入れたクロスオーバー的なトラックは、出演者の中でも群を抜いて先鋭的であった。同時に、ヴィクトリアのボーカルはR&Bや1970年代SOULの影響下にあり、エリカ・バドゥやミニー・リパートンらにも通じるコケティッシュな歌声は実に魅力的でもあった。
彼らのライブはバンド編成ではなく、PA LIVEと呼ばれるDJとボーカルだけのスタイル。人間のコミュニケーションによるダイナミズムが楽しめるバンドに対し、コンピューターでプログラムされた音楽の再現性が高く、ドラムとベースの質感は生演奏に置き換えることが不可能な現代のダンス・ミュージック界では、あえてDJに徹するアーティストも少なくない。バンドとDJが混在したモンテネグロのフェスティバルで、その両者のメリットを取り入れメーンステージの聴衆の心をつかんでいたアヌーシュカ。彼らの新人とは思えない力量にいたく感心させられた。