乗り継ぎで衣装が届かなかったことをネタにしながらも、エレクトリックで重量感あふれるサウンドをバックにエモーショナルなボーカルで会場を熱狂させる様子は、ヘッドライナーのような風格さえ漂わせていた。歌とトラックのアンビバレンスだけでなく、DJとライブの両極を行き来するという意味でもアヌーシュカは、アンダーグラウンドとポップスを融合しているとも言えよう。聴衆の中にはひたすら目を閉じ音楽に没頭している人もいれば、彼らのパフォーマンスの一挙手一投足から目を離さんとする人もいて、その両者が同居しているのも興味深かった。彼らは、その音楽性だけでなく、聴く人のタイプをも混ぜ合わせていたのだ。
大物がバックアップ
余談になるが、このアヌーシュカをリリースしたBROWNDSWOOD RECORDINGSはイギリスを代表するDJ、ジャイルス・ピーターソンによって設立されたインディペンデントレーベル。名門BLUE NOTEと契約し、世界的にブレークしたホセ・ジェームスをいちはやく発見してリリースした実績もある。クラブ・ジャズ(踊れるジャズとジャズに影響を受けたダンス・ミュージックの総称)の先駆者でもあるジャイルスが、本格派のジャズボーカリストだけでなく、アヌーシュカのような新しい音楽を生み出す若いユニットを世に輩出することはとても良いと思う。